ゴルフクラブ選びで「遠藤製作所 スリクソン」というキーワードを検索している方は、スリクソンのアイアンの製造元について知りたいか、その高品質な評判の秘密を探っているのではないでしょうか。実は、スリクソンの多くのアイアンモデルは、金属加工技術で名高い遠藤製作所によって製造されています。この日本が誇る技術力がプロゴルファーからも絶大な信頼を得ているのです。

本記事では、新潟県燕市に本社を構える遠藤製作所とスリクソン(ダンロップ)の長年にわたる関係性や、その卓越した技術がどのようにスリクソンアイアンに活かされているのかを詳しく解説します。2024年最新モデルの「ZXiシリーズ」に搭載された革新的な「i-FORGED」技術や、松山英樹プロも愛用する理由、さらには限定モデル「SRIXON Z-FORGED × 遠藤製作所スペシャルチューンモデル」の特別な魅力まで、徹底的に掘り下げていきます。
記事のポイント!
- 遠藤製作所がスリクソンアイアンを製造してきた歴史と深い信頼関係について知ることができる
- 遠藤製作所の軟鉄鍛造技術と研磨技術がスリクソンアイアンの評価を高めている理由がわかる
- 最新の「スリクソンZXiシリーズ」に搭載された革新技術「i-FORGED」の詳細と特徴を理解できる
- 松山英樹プロをはじめとするプロゴルファーが遠藤製作所製のスリクソンアイアンを選ぶ理由がわかる
遠藤製作所とスリクソンの深い関係性について
- 遠藤製作所はスリクソンアイアンの製造を長年担当している実績がある
- スリクソンI-404から現在までの遠藤製作所との歴史的な協力関係
- 遠藤製作所の軟鉄鍛造技術がスリクソンアイアンの品質を支えている
- 松山英樹プロも愛用する遠藤製作所製スリクソンアイアンの特殊調整
- 遠藤製作所における研磨技術がスリクソンの構えやすさを実現している
- スリクソン以外にも遠藤製作所がOEM製造する有名ブランドは多数存在する
遠藤製作所はスリクソンアイアンの製造を長年担当している実績がある
遠藤製作所は金属加工の街として知られる新潟県燕市に本社を構える金属加工メーカーです。同社は1947年(昭和22年)にミシン部品メーカーとして創業し、その後洋食器やキッチン用品などへ参入、1964年(昭和39年)にゴルフ事業に進出しました。
遠藤製作所の軟鉄鍛造技術や打感のよさ、仕上げの美しさは国内外のトップブランドから高く評価されており、多くのゴルフクラブブランドのOEM製造を手掛けています。特にダンロップのスリクソンシリーズについては、2004年発売の「スリクソンI-404」を皮切りに、歴代の軟鉄鍛造アイアンの製造を受託してきました。
新潟本社では、市販品の元となるマスターモデルの製作や、トッププロが愛用するアイアンの開発・製造を行っており、量産品はタイ工場で製造しています。このように、遠藤製作所はスリクソンアイアンの品質を支える重要なパートナーとして長年の実績を持っています。
クラブ設計家の宮城裕治氏によれば、「スリクソンのアイアンはすごく真面目に作られている」とのこと。また、「国内メーカーはほとんど中国生産に切り替えてしまいましたが、スリクソンが唯一遠藤製作所から離れないのはプロ対応をしっかりとしてくれるから」と評価しています。
遠藤製作所のゴルフ部・開発設計課には、マスターモデル製作やプロ用ヘッド製造のために「マスター・プロ担当」チームが存在しており、スリクソンアイアンの高品質な仕上がりを支えています。
スリクソンI-404から現在までの遠藤製作所との歴史的な協力関係
ダンロップとスリクソンブランドの歴代鍛造アイアンは、2004年に発売された「スリクソンI-404」から現在に至るまで、一貫して遠藤製作所によって製造されてきました。この長期にわたる協力関係は、両社の深い信頼関係を物語っています。
遠藤製作所の「マスター・プロ担当」チームのリーダーを務める助川真樹氏は、スリクソンのイメージについて「レベルにかかわらず、真剣にゴルフと向き合う人が使うブランド」と評しています。この言葉からも、プロフェッショナルな品質へのこだわりが伝わってきます。
スリクソンアイアンの開発では、プロからのフィードバックを積極的に取り入れ、それをマスターモデルの製作に反映させています。特に松山英樹プロのようなトッププロのフィードバックは、製品の改良に大きく貢献しています。
住友ゴム工業(株)スポーツ事業本部のゴルフビジネス部課長代理の大倉侑樹氏によれば、スリクソンのギア開発には「プロからフィードバックを得るためのプロサポートチーム、商品企画チーム、開発チームが真摯に取り組んでいて、本質的なものづくりをしている」とのことです。
この長年の協力体制により、スリクソンの鍛造アイアンは国内市場でかなり高い地位を築いており、アメリカ市場でも着実にシェアを伸ばしているとされています。
遠藤製作所の軟鉄鍛造技術がスリクソンアイアンの品質を支えている
遠藤製作所のスリクソンアイアン製造における中核技術は、高品質な軟鉄鍛造技術です。鍛造は、叩けば叩くほど硬く締まる「加工硬化」という鉄の性質を利用した製法で、通常のアイアンでは棒状の鉄から3回に分けて叩いて仕上げます。
2024年に発売された最新シリーズ「スリクソン ZXi シリーズ」では、この鍛造技術をさらに進化させた「i-FORGED」という新技術が採用されました。これには「コンデンス鍛造」という特殊な鍛造技術が含まれており、ヘッドの特定部分だけを集中的に鍛えることで強度を高めつつ、他の部分は打感を良くするために軟らかく保つことを可能にしています。
このような精密な鍛造技術により、スリクソンアイアンは「フェースに吸いつくような打感」「球をとらえた感触がしっかり手に伝わる」といった特性を実現しています。また、軟鉄の中でも特に軟らかい「S15C」といった素材を使用することで、さらに優れた打感を実現しています。
開発チームの中村崇氏によれば、「インパクト時のヘッドの変形量を抑えることで、打感がボヤけず、球をとらえた感触がしっかり手に伝わる」とのこと。このような細部へのこだわりが、プロからの高い評価につながっています。
宮城裕治氏は「フィーリングだと思います。最近はプロモデルでもバネ鋼を使いますが、スリクソンは正真正銘の炭素鋼なので、打感は外ブラ(外国ブランド)に負けていません」と評価しており、遠藤製作所の鍛造技術がスリクソンアイアンの核心的な価値を生み出していることがわかります。
松山英樹プロも愛用する遠藤製作所製スリクソンアイアンの特殊調整

現在PGAツアーを主戦場とする松山英樹プロもスリクソンと契約し、遠藤製作所製のアイアンを使用しています。特に注目すべきは、松山プロが遠藤製作所本社を直接訪れ、助川氏に直接要望を伝え、実際の仕上がりを確認しているという点です。
助川氏によると、松山プロはやさしい顔のアイアンが好みで、フェースは大きめな上、ある程度グースをつけているとのこと。また、ダンロップ契約プロの中で、現在助川氏が最も多く手掛けるのが松山プロのクラブであるとのことです。
「松山プロが出場する試合は、ほぼすべて録画をして見ています。やはり活躍してくれるのがいちばんうれしいですね」と助川氏は語っており、プロゴルファーのクラブ製作に対する真摯な姿勢がうかがえます。
松山英樹プロは現在「ZフォージドⅡ」アイアンを使用しており、ドライバーは「ZX5mkⅡ」を使用しています。このように、トッププロの要望に合わせた細かい調整が可能なのも、遠藤製作所の技術力の高さを示しています。
PGAツアーではブルックス・ケプカ選手など、他の外国人プロもスリクソンクラブを使用するケースが増えています。宮城氏によれば「外国人プロは意外と顔を見ないんですよ。打感、音、抜け方、飛び方がイメージ通りなら顔はあまり気にしません」とのことで、スリクソンアイアンの機能性の高さが国際的にも評価されていることがわかります。
遠藤製作所における研磨技術がスリクソンの構えやすさを実現している
遠藤製作所が誇る技術のもう一つの柱が、高度な研磨技術です。アイアンヘッドは鍛えた状態から「一皮むく」ことで製品になりますが、その際のバリを落とし、形を整えるための研磨の質が最終製品の品質を大きく左右します。
助川氏は「研磨の仕方がまずいと、構えた時に”ここが出っ張っている”とか”何かおかしい”といった余計な情報が入ってきてしまいます。一方、研磨がいいと、自分の打ち出したい方向にスッと構えられて、自分のイメージした弾道の球が打てます」と説明しています。
特筆すべきは、市販モデルとプロ用モデルの研磨の違いです。市販モデルがマスターモデルの形状を忠実に再現することを目的に研磨を行うのに対し、プロ用は研磨によって形状を微調整し、それぞれのプロの好みに合った”オリジナルモデル”に仕上げるのです。
例えば、トップラインの形状ひとつをとっても、アーチ状に丸くするとつかまりやすく見え、まっすぐにするとつかまり感は弱まるものの、ライン出しがしやすくなるといった違いが生まれます。プロゴルファーごとの好みや要望に合わせて、こうした微細な調整を手作業で行っているのです。
研磨の技術を活かした取り組みとして、2019年には「SRIXON Z-FORGED アイアン × 遠藤製作所スペシャルチューンモデル」が限定発売されました。このモデルでは、通常トッププロにしか提供しない助川氏の研磨技術を一般ゴルファー向けに提供するという画期的な試みが行われました。
スリクソン以外にも遠藤製作所がOEM製造する有名ブランドは多数存在する
遠藤製作所はスリクソン以外にも、多くの有名ゴルフブランドのOEM製造を手掛けています。公式には発表されていないため確実ではありませんが、ゴルフ関連のブログ情報によると、以下のようなブランドのモデルを製造していると言われています。
・キャロウェイ:Mickelson Blade(プロトタイプ)、X Forged 2013、Legacy Blackなど ・タイトリスト:680MB、910(ドライバー、FW)など ・ブリヂストン:J33シリーズ、J40シリーズ、J40ウエッジなど ・フォーティーン:TC-606、TC-777、TC-1000など ・ナイキ:VRシリーズ、VRプロリミテッド、VRプロブレードアイアンなど ・ミズノ:JPX 800 AD、JPX 825アイアン、MP CRAFT 425 ドライバーなど ・ヤマハ:インプレスX 4.6V r.p.m ドライバー、FWなど ・プロギア:RS FORGED アイアンなど
これらの情報は公式には確認されていませんが、特にポケットキャビティタイプのアイアンは遠藤製作所の得意とする分野とされており、古いモデルでこのタイプのものは高い確率で遠藤製作所製と推測されています。
宮城裕治氏によれば「アイアンはマスターモデルを削る人のセンスが大事」であり、「形状についてはメーカーもある程度注文を出しますが、ネック周りなど肝心なところの仕上げはマイスターの腕次第」とのこと。宮城氏自身もアイアンを作る際には毎回遠藤製作所の同じマイスターに依頼しているそうです。
このように、遠藤製作所はスリクソンブランドだけでなく、多くの有名ブランドのゴルフクラブ製造に関わっており、日本の金属加工技術の高さをゴルフ業界で広く発揮しています。

遠藤製作所が手掛けるスリクソン最新モデルの技術革新
- スリクソンZXiシリーズには遠藤製作所の革新的「i-FORGED」技術が採用されている
- スリクソンZXi7アイアンは遠藤製作所の「コンデンス鍛造」で打感が向上した
- スリクソンZXi5アイアンはブレード強化と新熱処理で飛距離性能が向上している
- スリクソンZXi4アイアンは軟らかい素材採用で調角が可能になっている
- スリクソンZXiユーティリティはV字ソール初搭載で操作性が向上している
- 限定モデル「SRIXON Z-FORGED × 遠藤製作所スペシャルチューン」はプロ仕様の研磨技術を一般向けに提供
- まとめ:遠藤製作所とスリクソンの技術コラボレーションが日本製ゴルフクラブの価値を高めている
スリクソンZXiシリーズには遠藤製作所の革新的「i-FORGED」技術が採用されている
2024年に発売された最新シリーズ「スリクソン ZXi シリーズ」には、遠藤製作所の革新的な技術「i-FORGED」が採用されています。この技術は、特性の異なる各モデルの性能を高めるために開発された技術の総称です。
「i-FORGED」技術は、アイアン3モデル(ZXi7、ZXi5、ZXi4)とユーティリティにそれぞれ搭載されています。この技術の核心は、従来の鍛造技術を進化させた「コンデンス鍛造」と、各モデルの特性を高めるためのさまざまな工夫の組み合わせにあります。
住友ゴム工業の中村崇氏によれば、前作シリーズが非常に高い評価を得ていたため、新シリーズの開発では「何を変えるべきか」について苦心したとのこと。そこで出た結論が「正常進化」の方向性でした。つまり、好評だったヘッド形状や「スリクソン顔」と言われる見た目は維持しつつ、中身の技術で性能を向上させるというアプローチです。
商品企画を担当した大倉侑樹氏も「大きくは変えたくない。でも、やはりキーテクノロジーのような、ユーザーを惹きつける何かが欲しい」という要望を開発チームに出したとのこと。こうして生まれたのが「i-FORGED」技術であり、形状よりも中身の進化に焦点を当てた開発となりました。
この技術の採用により、各モデルがそれぞれの特性(打感、飛距離、操作性等)をさらに高めることに成功しています。また、プロからの評価も非常に高く、数発打っただけで「かなり違う」と前作との違いを感じ取ったとのことです。
スリクソンZXi7アイアンは遠藤製作所の「コンデンス鍛造」で打感が向上した
「スリクソン ZXi7 アイアン」は、国内外の男子プロに多くのユーザーを持つハーフキャビティタイプのモデルです。このモデルの開発では、プロゴルファーが特にこだわる「打感」の向上が最重要課題とされました。
ZXi7アイアンでは、i-FORGEDの構成要素のひとつである「コンデンス鍛造」技術がネック部分に採用されています。通常の鍛造では3回に分けて叩いて仕上げますが、コンデンス鍛造では、最後の3回目の工程でネック部分の突起を集中的に潰すことで、その部分だけを特に硬くして強度を増しています。
この技術により、ネック部分の強度が向上したため、ヘッド本体には「S15C」という非常に軟らかい軟鉄を採用することが可能になりました。さらに打感を向上させるために、i-FORGEDのもう一つの要素「PUREFRAME」によってバックフェースの肉厚分布も改良されています。
前作に比べて、厚肉部の面積と形状が変更され、フェース上部にまで厚肉部が広げられ、センター部分もかなり分厚くなっています。これにより、ボールがラフに入って浮いた時にフェース上部でヒットしても良い打感が得られるようになりました。
中村崇氏によれば、前作に比べてインパクト時のヘッドの変形量が1割近く減少したとのこと。「この変形量というのは、トップブレードに対してフェース面がどれぐらい凹むかを測るものです。変形量を抑えることで、打感がボヤけず、球をとらえた感触がしっかり手に伝わってくる」と説明しています。
すでに女子プロの櫻井心那プロや小祝さくらプロが「ZXi7 アイアン」を実戦投入しており、高いパーオン率を記録しているとのことです。
スリクソンZXi5アイアンはブレード強化と新熱処理で飛距離性能が向上している
「スリクソン ZXi5 アイアン」は、女子プロがフルセットで使用するほか、男子プロがロングアイアンとして選ぶことの多いポケットキャビティタイプのモデルです。このモデルでも「コンデンス鍛造」技術が採用されていますが、ZXi7とは異なり、バックフェース上部(トップブレード部分)に適用されています。
中村崇氏によれば、「意外と知られていないことですが、キャビティアイアンでいちばん強度が必要な部分が、実はトップブレードなんです。フェースを支えるのがブレードなので、ブレードが弱いとフェースを十分にたわませることができません」とのこと。そこで、バックフェース上部に細い畝状の突起をトップブレードからトウを回り込むように付け、その突起を3回目の鍛造で叩いて潰すことでこの部分の強度を高めています。
ZXi5アイアンの開発目標は、7シリーズよりも「距離が出る」「やさしい」という特性を強化することでした。そのために、フェースを軟らかくしてよりたわませる設計となっています。また、前作では、ヒールからトウにかけてフェース厚を徐々に厚くしていましたが、ZXi5ではトウ寄りのブレードの強度が上がったため、トウのフェース厚を薄くして、ヒール側と同じ厚さにすることができました。
中村氏は「つまり、トウ寄りでヒットしてもフェースがたわみ、大きく飛ばすことができる」と説明しています。また、フェースの新たな熱処理方法も採用されており、これは打感のさらなる向上と、たわみを大きくするという2つの目的を達成するためのものです。
その結果、ZXi5アイアンは実際にボールスピードがアップし、プロゴルファーからその軟らかい打感が高く評価されています。コンボセットでアイアンを使用する片岡尚之プロは、#3~5にZXi5アイアンをチョイスし、「長い番手でもしっかり球が上がりますね。打感も気持ちいいです」と絶賛しています。
スリクソンZXi4アイアンは軟らかい素材採用で調角が可能になっている

「スリクソン ZXi4 アイアン」は、初代モデルから中空構造を採用し、スリクソンアイアンのラインアップの中で最もやさしいモデルです。ZXi4アイアンで採用された「i-FORGED」技術の核心は、新たなボディ材料の採用にあります。
中村崇氏によれば、前作よりも軟らかい「ソフトステンレス」に素材を変更したとのこと。この素材は熱処理がしやすいという特長もあり、ネック部分にだけ熱処理を施すことで曲がりやすくしているため、前作より調角(ライ角やロフト角の調整)がしやすくなっています。
大倉侑樹氏は「ZXi シリーズでは、ドライバーからアイアンまで、『フィッティングのレベルを上げて、ターゲットユーザーの幅を広げよう』というのが開発テーマだった」と説明。ZXi4アイアンを調角できるようにしたのもそのためで、やさしいモデルだからといって調角が不要というわけではなく、必要に応じて調角することで、本当に自分に合ったやさしいクラブでプレーできるという考えです。
さらに、4シリーズの特長である「やさしさ」も強化されています。フレームのトウ側にある縦方向の溝の幅を約1ミリ広げ、それにより生じた余剰重量をソール近くのヒール寄りにウエイトとして配分することで、低重心化とつかまりやすさを実現しています。
また、クリーブランド ウエッジの伝統技術「ZIPCORE TECHNOLOGY」も採用され、ネック内部のフェース寄りに空洞を設け、その余剰重量をソールに配分することで、さらなる低重心化を図っています。
前作はトウ側に重心を寄せて慣性モーメントを大きくする設計でしたが、新モデルではヒール寄りに重心を移動。中村氏は「しっかりとフェースをローテーションさせてボールをつかまえるなら、もう少し重心がヒール寄りにあるべき」と説明しています。
ZXi4アイアンは調角可能になったことで、プロゴルファーのコンボセット使用にも適しています。ストロングロフトでロフト体系も他のシリーズと異なるため、前作までは組み合わせが難しかったものの、今回の改良で「もう少しやさしく上がって、距離も欲しい」というプロの要望にも対応できるようになりました。
スリクソンZXiユーティリティはV字ソール初搭載で操作性が向上している
「スリクソン ZXiU ユーティリティ」は、PGAツアーのプロたちからも高く評価されているモデルで、クラブ契約フリーのプロも含め、驚くほど多くのプロが使用しているとのことです。
ZXiUユーティリティには、ZXi5アイアンと同じ「i-FORGED」技術が搭載されています。トップブレードからトウにかけて「コンデンス鍛造」を施すことにより、フェースのトウ側の厚みを従来より薄くし、軟らかくすることに成功しています。また、「MAINFRAME」というもう一つのi-FORGED技術の効果により、フェースに食いつくような打感を実現した上、大幅な平均飛距離アップを達成しています。
特筆すべき進化として、アイアンと同じ「TOUR V.T. SOLE」(V字ソール)を初めて搭載した点が挙げられます。中村崇氏によれば、「スリクソンのユーティリティは、ここ数代のモデルはややソール幅を狭く設計してきたのですが、実はPGAツアーのプロの間では、それ以前のソール幅の広いモデルへの評価がいまだに高い」とのこと。そこで新モデルは、そのプロにも評価の高かったモデルと同じソール幅に設計し、「プロにはやさしすぎるんじゃないか?」というくらいやさしく仕上げています。
さらに、フェースの肉厚分布や材料の変更など中身の進化も加わったことで、ボールが上がりやすくなり、平均飛距離も伸びています。重心を下げたことで、下打ちにも強くなり、トップのようなミスも出にくくなっているとのこと。一般アマチュアゴルファーには特にありがたい改良といえるでしょう。
ハイブリッドと比較して操作性が高いのがユーティリティの魅力ですが、ZXiUユーティリティはヘッドスピードが十分に速く、球を上げるのを苦にしないプロ・上級者にも「低く抑えた球が打てる」と評価されています。また、直進性の高さから「絶対に曲げたくない」という場面での使用も多いようです。
実打テストでは、前作と比較して平均飛距離が実に6.2ヤード(ドライバーのヘッドスピードを43m/sで想定)も伸びており、その性能向上は実証されています。
限定モデル「SRIXON Z-FORGED × 遠藤製作所スペシャルチューン」はプロ仕様の研磨技術を一般向けに提供
2019年に発売された「SRIXON Z-FORGED アイアン × 遠藤製作所スペシャルチューンモデル」は、プロ・上級者に人気のフラットバック「SRIXON Z-FORGEDアイアン」を、遠藤製作所がスペシャルチューンした限定モデルです。全国5店舗のダンロップ直営店で25セット限定という希少なモデルでした。
この特別モデルの最大の特徴は、通常はトッププロのクラブ調整のみを担当する遠藤製作所の助川真樹氏が、一般ゴルファー向けに研磨を行うという画期的な取り組みでした。助川氏は遠藤製作所の「マイスター」という肩書きを持ち、マスターモデルやプロ用ヘッドの担当チームのリーダーを務めています。
このモデルでは、わずかに形状の異なる複数のヘッドが用意され、まず専用ヘッドでフィッティングを行った後、好みの形状のヘッドを選び、さらに形状などに関する要望を聞いた上で、助川氏が形にするという流れでした。
助川氏は「お客様には、まずサンプルのヘッドをよく見ていただきたいと思います。そして、トップブレード、ソール、ネックと、それぞれについてご要望があれば、できる限りお応えします。研磨の作業としてはプロの場合と同じですから、私自身25人のプロに接するつもりで作業をします」と語っています。
SRIXON Z-FORGEDアイアンは、小さめのヘッドで重心が高めというフラットバックの特性から、上からしっかり打ち込まないとスピンがかからず、打点が芯から外れるとフライトもばらつきますが、スイートエリアでとらえた時の打感のよさは他の何物にも代えがたいとされています。
住友ゴム工業の平野智哉氏は「キレ味の鋭いショットというのも、キャビティバックなど他のタイプでは出せないように思います。『SRIXON Z-FORGED アイアン』は、そうした違いの分かる方や、『やはりフラットバックでなければ』というこだわりのある方におすすめしたいモデルです」と評しています。
このようなプロ仕様の特別モデルを一般ゴルファーに提供するという試みは、遠藤製作所とスリクソンの高い技術力と顧客へのこだわりを示すものといえるでしょう。

まとめ:遠藤製作所とスリクソンの技術コラボレーションが日本製ゴルフクラブの価値を高めている
最後に記事のポイントをまとめます。
- 遠藤製作所は1947年創業の金属加工メーカーで、1964年からゴルフ事業に参入した歴史ある企業である
- スリクソンアイアンは2004年の「スリクソンI-404」から一貫して遠藤製作所が製造を担当している
- 遠藤製作所の軟鉄鍛造技術と精密な研磨技術が、スリクソンアイアンの高品質と優れた打感を支えている
- 最新の「スリクソン ZXi シリーズ」には新技術「i-FORGED」が採用され、各モデルの特性に合わせた進化を遂げている
- 「コンデンス鍛造」技術により特定部位だけを強化することが可能になり、薄くて軟らかいフェースと強度の両立を実現した
- ZXi7アイアンはネック部分にコンデンス鍛造を適用し、S15Cという軟らかい素材の採用で優れた打感を実現している
- ZXi5アイアンはトップブレード部分にコンデンス鍛造を適用し、フェースを均一に薄くすることで飛距離性能が向上した
- ZXi4アイアンは新素材「ソフトステンレス」の採用とネック部分の熱処理により調角が可能になっている
- ZXiユーティリティはアイアンと同じV字ソールを初搭載し、ソール幅の拡大と中身の進化で平均飛距離が6.2ヤード向上した
- 松山英樹プロをはじめとするトッププロは、遠藤製作所に直接足を運び、自分好みのクラブ調整を依頼している
- 2019年には限定モデル「SRIXON Z-FORGED × 遠藤製作所スペシャルチューン」が発売され、プロ用の研磨技術を一般向けに提供した
- 遠藤製作所はスリクソン以外にも、キャロウェイ、タイトリスト、ブリヂストンなど多くの有名ブランドのOEM製造を手掛けているとされる
- 宮城裕治氏によれば「スリクソンのアイアンはすごく真面目に作られている」「人間の使う道具として真面目に作られているところが評価されている最大の理由」とのこと